銀はなぜ増産しにくいのか?

2026年2月18日の相場
| 小売価格(税込) | 買取価格(税込) | 前日比 | |
|---|---|---|---|
| 金 | 26,623円/g | 26,266円/g | -569円/g |
| 銀 | 404.80円/g | 387.75円/g | -18.70円/g |
※徳力本店の地金相場より引用しております。
銀価格が上昇すれば、供給は増えるのだろうか。
金であれば、理論上はそうなる。
だが銀は違う。
2025年版 World Silver Survey の最新データを読み解くと、
銀は構造的に「増産しにくい金属」であることが見えてくる。
数字からその理由を静かに確認していきたい。
Contents
1.世界銀鉱山生産の現状
2024年の世界銀鉱山生産は 819.7百万オンス(Moz)。
2025年は 約835Moz へと増加が予測されている。
一見すると増産基調に見える。
しかし、その増加幅はわずか 約2%前後 にすぎない。
銀価格は近年大きく変動してきた。
それにもかかわらず、鉱山供給は価格上昇に対して敏感に反応していない。

過去10年を振り返ると、世界の銀鉱山生産は概ね 800〜850Mozのレンジ内で横ばい にとどまっている。
急増も急減もない。
むしろ「高止まりしたまま動かない資源」と言える。
ここに銀の本質がある。
銀は、需要が増えれば即座に増産できるタイプの資源ではない。
供給は市場価格よりも、鉱山構造そのものに縛られている。
つまり
銀は「価格で動く資源」ではなく、
“構造で制限される資源” なのである。
2.銀生産の約70%は「副産物」
銀鉱山生産構造は、非常に特徴的である。
主産物としての銀は約27〜30%。
残りの約70%超は、副産物として生産されている。
2024年の鉱山生産内訳は以下の通りだ。

- 銀鉱山(主産物):27.8%
- 鉛・亜鉛鉱山:29.4%
- 銅鉱山:26.8%
- 金鉱山:15.5%
- その他:0.5%
出典:World Silver Survey 2025(Metals Focus / The Silver Institute)
つまり
世界の銀の大半は「銀を掘ろうとして掘られているわけではない」。
銀は、多くの鉱山において“主役”ではないのである。
実例:巨大銅鉱山が生む銀
例えば、ポーランドの
KGHM Polska Miedź。
同社は世界有数の銅生産企業だが、同時に世界有数の銀生産者でもある。
しかし同社の主目的はあくまで銅であり、銀は副産物だ。
また、チリの
Candelaria Mine。
ここも典型的な銅鉱山であり、銀は付随的に回収される金属にすぎない。
なぜ価格が上がっても増産できないのか
ここに供給の“硬直性”がある。
銀価格が上昇しても、
- 銅価格が下落すれば鉱山拡張は見送られる
- 鉛・亜鉛の需要が減れば操業は抑制される
- 金鉱山の採算が悪化すれば生産量は減る
銀は、自分の価格だけでは運命を決められない金属なのである。
供給の意思決定権は、銅・鉛・亜鉛・金の市場に握られている。
これが意味するのは
銀は「価格で動く資源」ではない。
銀は「他金属の経済性に従属する資源」である。
だからこそ、需要が急増しても供給は即応しない。
銀は“掘りたくても掘れない”構造を持っている。
3.生産は一部の国に集中している
2024年時点の世界銀鉱山生産は、特定の国に強く集中している。
主要生産国は以下の通りである。
- 1位:メキシコ
- 2位:中国
- 3位:ペルー
- 4位:チリ
- 5位:ボリビア
出典:World Silver Survey 2025(Metals Focus / The Silver Institute)
上位5か国で世界生産の過半を占める。
とりわけメキシコの存在は圧倒的だ。
同国には世界最大級の銀生産企業であるFresnillo plcが拠点を置き、
巨大鉱山Peñasquito Mineも稼働している。
しかし、ここで重要なのは「規模」ではない。
重要なのは集中である
供給が特定地域に偏在しているということは、
- 鉱業税の引き上げ
- 環境規制の強化
- 労働ストライキ
- 政治的混乱
- 資源ナショナリズム
これらがそのまま世界供給に直結するという意味を持つ。
銀はグローバルに取引される金属だが、
その供給基盤は驚くほどローカルである。
分散しているように見えて、
実態は「地政学的に偏った金属」なのだ。
4.主要銀鉱山ランキング(2024年実績ベース)
2024年時点での主要銀鉱山は以下の通りである。
(World Silver Survey 2025 ベース)
- Peñasquito Mine(メキシコ):約33 Moz
- Saucito Mine(メキシコ):約20 Moz
- Fresnillo Mine(メキシコ):約19 Moz
- San Julian Mine(メキシコ):約16 Moz
- Antamina Mine(ペルー):約15 Moz(銅・亜鉛主体の副産物)
- KGHM Polska Miedź mining operations(ポーランド):約13 Moz(銅主力)
- Cannington Mine(オーストラリア):約11 Moz(鉛・亜鉛主体)
- Uchucchacua Mine(ペルー):約9–10 Moz
- Greens Creek Mine(米国):約9 Moz
- Zhezkazgan mining complex(カザフスタン):約8–9 Moz(銅副産物)
※数値は概算(World Silver Survey 2025を基に整理)
ここから見える構造
- 上位の多くがメキシコ集中
- しかし半数以上が副産物型鉱山
- 純粋な「銀専業」は少数派
特に重要なのは、
トップ10のうち、副産物依存型が多数を占めること。
つまり、
世界最大級の銀鉱山でさえ、銀価格だけで動いているわけではない。
トップ10合計は世界の何%か?
2024年の世界銀鉱山生産:
819.7 Moz
前述のトップ10鉱山の合計(概算):
33 + 20 + 19 + 16 + 15 + 13 + 11 + 10 + 9 + 9
= 約155 Moz
155 ÷ 819.7 = 約18.9%
世界トップ10鉱山をすべて合わせても、世界生産の約19%に過ぎない。
これは非常に重要である。
「巨大鉱山でも30Moz規模」という現実
世界最大級の銀鉱山でさえ、
年間約30Moz規模。
世界全体(約820Moz)に対しては、
わずか約4%しか占めない。
つまり
- 1つの巨大鉱山が止まっても世界は崩壊しない
- しかし同時に、1つの巨大鉱山だけで供給を押し上げることもできない
銀市場は、
「超巨大鉱山が市場を支配する構造」ではない。
むしろ、
中規模鉱山が分散し、しかも副産物として生産される構造
なのである。
供給構造が示す“本当の制約”
ここまで見てきた通り、銀供給には明確な特徴がある。
- 生産は一部の国に集中している
- 上位鉱山でも市場支配力は限定的
- しかも多くが副産物型である
つまり銀は、
「価格が上がれば増産できる金属」ではない。
地政学的リスクに左右され、
他金属の採算に依存し、
しかも単独巨大鉱山による供給調整も効かない。
これが銀市場の土台である。
では、もう一つの制約は何か?
それがコスト構造である。
仮に価格が上昇しても、
採掘コストが同時に上昇していれば、
企業の利益は思うほど拡大しない。
そして近年、鉱山業界では
AISC(総維持コスト)の上昇が続いている。
供給が硬直的であるうえに、
コストまで上昇しているとしたら――
銀は構造的に「増やしにくい金属」になる。
次章では、このAISCの上昇が意味するものを詳しく見ていこう。
5.AISCの上昇が意味するもの
銀価格は上がったり下がったりする。
だが、鉱山の生産コストはほとんど一方向にしか動かない。
それが AISC(All-in Sustaining Cost) である。
AISCは単なる採掘コストではない。
鉱山が持続的に操業するために必要な“総維持コスト”を示す指標だ。
Primary Silver Mines 加重平均AISC推移(2016–2024)
| 年 | AISC(US$/oz, by-product basis) |
|---|---|
| 2016 | 8.50 |
| 2017 | 9.65 |
| 2018 | 9.75 |
| 2019 | 11.56 |
| 2020 | 11.34 |
| 2021 | 11.67 |
| 2022 | 13.76 |
| 2023 | 17.18 |
| 2024 | 14.58 |
出典:Metals Focus, World Silver Survey 各年版
8年間で +71%
2016年:$8.50
2024年:$14.58
増加率:+71%
年率換算:約+7%
これは単なるインフレではない。
銀の「掘りにくさ」が上がっていることを意味する。
なぜAISCは上昇するのか
AISCには以下が含まれる:
- 採掘コスト
- 処理・精錬費
- 維持投資(サステイン資本支出)
- 管理費
- 副産物クレジット調整
上昇の背景には、
- 鉱石品位の低下
- 鉱山の深部化による採掘難易度上昇
- エネルギー価格の高騰
- 労働コストの上昇
- 環境規制の強化
がある。
つまり銀は、
年々「コストの壁」を積み上げている資源なのである。
2023年:構造ショックの顕在化
2023年AISC:$17.18
これは単なる一時的な異常値ではない。
構造的圧力が可視化された年と見るべきだ。
エネルギー価格の高騰と副産物価格の低下により、
マージンは急縮小した。
銀価格が安定していても、鉱山利益は安定しない。
2024年の低下は「構造改善」ではない
2024年AISC:$14.58
一見すると回復に見える。
しかし主因は、
- 金価格上昇
- 銅価格回復
による副産物クレジット改善である。
採掘効率が劇的に向上したわけではない。
構造そのものは変わっていない。
マージンで見る現実
2024年平均銀価格:約$28
AISC:$14.58
マージン:約$13.4
余裕があるように見える。
だが、仮に銀価格が$20へ下落すれば:
マージン:約$5
この水準では、大規模拡張投資は極めて難しい。
供給の「床」は切り上がっている
AISCが上昇するということは、
銀価格の下値が構造的に切り上がっている
という意味でもある。
2016年の$16と
2024年の$16では意味がまったく異なる。
同じ価格でも、生産余力は大きく違う。
価格が横ばいでも、
供給構造は静かに硬直している。
供給弾力性の欠如との連動
前章で見た通り:
- 銀供給の70%は副産物
- 生産は一部の国に集中
- 巨大鉱山でも30Moz規模
ここにAISC上昇が重なる。
✔ 価格が上がっても供給は急増しない
✔ 価格が下がればマージンは即座に圧迫される
銀市場は、非対称的な供給構造を持っている。
現在価格$73の意味(2026年2月18日時点)
銀価格:$73
AISC:$14.58
理論上のマージン:$58.42
鉱山側は“爆益”状態に見える。
通常であれば、
- 探鉱投資急増
- 拡張計画加速
- 休止鉱山再稼働
- M&A活発化
が起こる局面である。
それでも供給は急増しない
しかし、ここが銀の構造だ。
- 銀の70%は副産物
- 主産物銀鉱山は27〜30%
価格が$73でも、
銅鉱山は“銅価格”で動く。
銀価格だけでは供給は爆発しない。
構造的結論
銀鉱山は、
- 経済的に不安定
- 政治的に不安定
- 環境的に制約増加
三重の制約下にある。
価格が上がっても、供給は急増しにくい。
今後どうなるのか
もし$73が持続するなら、
- 構造的供給不足の顕在化
- 通貨不信・地政学要因の反映
- 金銀比率の縮小
が進行する可能性はある。
しかし、供給コスト$14に対して$73は
コスト均衡価格ではない。
現在の相場は、
「コスト主導相場」ではなく
マクロ主導相場の可能性が高い。
- 通貨価値低下
- 金価格急騰
- 投機資金流入
これらが絡み合っている局面と考えられる。
まとめ
銀は価格が上がれば増産できる金属ではない。
その供給は、副産物構造とコストの壁に縛られている。
もし高価格が続くなら、
市場はやがてその「供給の硬さ」と真正面から向き合うことになるだろう。
銀は、価格で動く資源ではない。
構造で制限される資源である。
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